Industry Benchmark

小売業の会社売却相場

小売業(専門店・食品・自動車販売など)の株式価値は、中小企業M&Aの実務では EBITDAの3.0〜5.0倍、または 時価純資産+実態利益の1〜3年分 がレンジです。この記事では、その根拠と買い手が見るポイント、計算例、売却前にできる準備を解説します。

EV/EBITDA倍率
3.05.0
中央 4.0倍
営業権年数
13
中央 2年
DCF割引率
11〜15%
非上場・小規模の目安
小売業のイメージ
写真はイメージです
この記事の要点
  1. 小売業のEBITDA倍率は3.0〜5.0倍、営業権は利益の1〜3年分が実務レンジ
  2. 立地と賃借条件(賃料水準・契約残存期間・承継可否)
  3. 自社物件でなく賃借の場合、貸主が譲渡に応じないと店舗を引き継げない

相場の見方:なぜ「3.0〜5.0倍」なのか

全業種の下限 2.5倍上限 12.0倍3.0倍中央 4.0倍5.0倍
EBITDA倍率:全業種の中での位置

非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。小売業の場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は3.0〜5.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の1〜3年分がレンジになります。

重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。

買い手は誰か

同業チェーン(出店の代替)、メーカー・卸(販路の垂直統合)、地域の有力企業、EC事業者(実店舗の獲得)。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。

評価を押し上げるポイント

  • 立地と賃借条件(賃料水準・契約残存期間・承継可否)
  • 店舗ごとの損益と、不採算店の有無
  • 会員・顧客データ、EC比率などリピート構造
  • フランチャイズ加盟の場合は本部の承諾条件

ディスカウント要因

  • 自社物件でなく賃借の場合、貸主が譲渡に応じないと店舗を引き継げない
  • 社長の個人的な接客・目利きに依存している専門店は属人性が高い
  • ECとの競合で商圏が縮小しているカテゴリは倍率が下がる

計算例:小売業・売上4.00億円の会社

売上高400,000千円、営業利益16,000千円、減価償却費6,000千円、役員報酬15,000千円(承継後の適正水準10,000千円)、純資産60,000千円、現預金30,000千円、有利子負債50,000千円のモデルケースで試算します。

60,000時価純資産+42,000調整後営業利益×2年102,000株式価値(営業権法・中央)単位:千円
純資産+営業権法の中央値まで
正常収益力の調整
営業利益16,000
+ 役員報酬の適正化(15,000 − 10,000)5,000
調整後営業利益21,000
+ 減価償却費6,000
調整後EBITDA27,000
純資産+営業権法
純資産 60,000 + 調整後営業利益 × 1年81,000
純資産 60,000 + 調整後営業利益 × 2年102,000
純資産 60,000 + 調整後営業利益 × 3年123,000
EBITDA倍率法(ネットデット 20,000)
EBITDA × 3.0倍 − ネットデット61,000
EBITDA × 4.0倍 − ネットデット88,000
EBITDA × 5.0倍 − ネットデット115,000

この会社の株式価値の目安は 88百万円 〜 1.02億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が5,000千円増え、営業権法では中央値で10,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。

売却前にできる3つの準備

  1. 店舗別損益を整備し、不採算店の閉鎖・改善を先に進める
  2. 賃貸借契約の譲渡条項を確認し、貸主との関係を良好にしておく
  3. 顧客データ・会員数・リピート率を整理する

準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。

小売業の売却でよくある質問

1店舗の専門店でも買い手はつきますか?

つきます。特に食品・自動車・眼鏡・ペットなど専門性の高い業態は、同業チェーンが新規出店の代わりに買収します。

店舗物件が自社所有だと評価は上がりますか?

不動産の含み益は時価純資産に加算されます。不動産を切り離して事業だけ譲渡する選択肢も検討できます。

小売業の売却相場、自社の場合は?

決算書の数字を入れるだけで、この記事と同じ倍率・年数で3手法の株式価値レンジを算定できます。結果をもとに、Tsugiyaが無料で実際の相場感と準備をお伝えします。全国対応、オンライン面談可、秘密厳守。

まだ売ると決めていない方へ:決算書チェックリスト(PDF)と承継準備ロードマップ(Excel)を無料で配布しています。

他の業種の相場を見る