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DCF法は中小企業の売却で使えるか|割引率の目安と簡易計算

DCF法は「将来生み出す現金を、リスクに応じた利率で現在の価値に引き直す」理論的な評価方法です。上場企業のM&Aでは中心的な手法ですが、中小企業では前提の置き方で結果が大きく変わるため、他の手法の裏付けとして使われます。仕組みと目安を説明します。

株式会社Tsugiya M&A仲介の実務より | 更新 2026-09-20
この記事の要点
  1. 将来のキャッシュフローを割引率で現在価値に直す。理論的に最も正しいが前提で大きく動く
  2. 非上場中小企業の割引率は8〜15%。成長率は0〜1%
  3. 中小M&Aでは年買法・倍率法の「検算」として使う

DCF法の式

事業価値 = 各年のフリーキャッシュフローの現在価値の合計 + 継続価値の現在価値

フリーキャッシュフロー(FCF)は、税引後営業利益 + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増加。中小企業の簡易計算では「設備投資 ≒ 減価償却費、運転資本の増加 ≒ 0」と置き、FCF ≒ 営業利益 × (1 − 税率30%) とすることが多いです。

5年分のFCFを割引率で現在価値に直し、6年目以降は「継続価値 = 6年目のFCF ÷ (割引率 − 永久成長率)」でまとめて評価します。

割引率(WACC)の目安

割引率は「この会社に投資する人が求める利回り」です。非上場の中小企業では、上場企業より高い8〜15%が目安になります。

会社の特徴割引率の目安
業績安定・ストック型収益・財務良好8〜10%
標準的な中小企業10〜12%
業績変動大・属人性高・顧客集中12〜15%

永久成長率は0%(保守的)〜1%が標準です。人口減少の影響が大きい内需業種では0%を推奨します。割引率10%・成長率0%なら、事業価値はおよそ「FCF × 10倍」、割引率12%なら「FCF × 8.3倍」になります。

計算例

割引率 10%250,000千円割引率 12%(標準)203,333千円割引率 14%170,000千円
割引率2%の差で株式価値が8,000万円動く(計算例)

調整後営業利益4,000万円、税率30%、割引率12%、成長率0%、有利子負債9,000万円、現預金6,000万円。

年間FCF(40,000 × 0.7)28,000
1〜5年目FCFの現在価値合計100,934
継続価値(28,000 ÷ 0.12)の現在価値132,399
事業価値233,333
− ネットデット(90,000 − 60,000)−30,000
株式価値203,333

単位は千円。割引率を10%にすると株式価値は2億5,000万円、14%なら1億7,000万円。割引率2%の差で8,000万円動くため、DCF法の結果は「前提つきのレンジ」として読む必要があります。

写真はイメージです

中小企業でのDCF法の位置づけ

DCF法は理論的には最も正しい手法ですが、5年先の利益予測と割引率の置き方で結果が大きく変わるため、中小企業M&Aの価格交渉で単独で使われることは少ないです。実務では、年買法とEBITDA倍率法で出た価格が、DCF法でも説明できるかを確認する「検算」として使います。3手法が近い値を示せば、価格の説得力は高くなります。

企業価値シミュレーターは3手法を同時に計算し、DCF法では業種と定性要因に応じた割引率を自動で設定します。

よくある質問

買い手からDCF法で低い価格を提示されました。

割引率と将来予測の前提を確認してください。割引率15%・成長率マイナスなど保守的な前提が置かれていることが多く、年買法・倍率法との差を示して交渉できます。

成長している会社はDCF法が有利ですか?

はい。年買法や倍率法は過去の利益に基づくため、成長中の会社は過小評価されがちです。成長率を織り込めるDCF法や、将来利益に基づく倍率法を主張するのが有効です。

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